葉子だけは春が来てもやせた。来るにつけてやせた。ゴム毬（まり）の弧線のような肩は骨ばった輪郭を、薄着になった着物の下からのぞかせて、潤沢な髪の毛の重みに堪（た）えないように首筋も細々となった。やせて悒鬱（ゆううつ）になった事から生じた別種の美――そう思って葉子がたよりにしていた美もそれはだんだん冴（さ）え増さって行く種類の美ではない事を気づかねばならなくなった。その美はその行く手には夏がなかった。寒い冬のみが待ち構えていた。

頬のげっそり削げたのが目だって見える

瘠（や）せて青ざめて眼ばかり大きな子

少し痩せたせいか、隙のない化粧をしていても唇の両端の薄いしわを隠すことができない。

瘠（や）せた黄瓜（きゅうり）のような色と形とを兼ね得たる顔の所有者

（眠っている人の）今にも溶けそうな頬

頬に血の色が浮き顔が輝く

笑いをこらえようと、笑窪が何度も出たり消えたりする

頬のたっぷりした中年の顔

紅をさしたように赤かった頬

西洋人くさく彫りの深い顔立ち

口中が臭そうな容貌

鼻も口も一つに寄ったようなせせこましい顔貌（かおつき）

元々白くない顔色は寝起きのせいか艶気もなく、目の縁の青黒さだけが際立って、色気はまったく失っている

寝たりない腫れぼったい顔