大部屋の空気の変化に気づいていた。熱気が薄れた。奇妙なほど落ちつき払っている。喧騒は相変わらずだが、殺気立ったところがない。昨日まで部屋中を包んでいた、ヒリヒリとするような乾いた空気が、微かだが湿りけを含んでいるようにも感じられる。《…略…》犠牲者の遺書に流した局員の涙が、熱に浮かされていた大部屋の空気に湿りけと落ちつきをもたらした。

（別れ話に）彼は完全に泣いていた。明るいとんかつ屋の片隅は、まったく異様な空気に包まれ、従業員たちは恐れをなして皿をさげにも来なかった。

彼が現われると有毒なガスのように暗鬱な空気が収容所に隈なく瀰漫（びまん）していった。

記事が出ると三島署内に険悪な空気が一気に充満し、ほとんどの署員が重藤を含めた特別捜査班に敵意の籠もった視線を投げつけてきた。

空気が重苦しくなった。立っている僕らが、それぞれ見えない綱を引っ張り合っているようだ。息苦しくなる。

（直接見ていないけど）うなずく気配がした。

何者かが身を潜め、じっと闇の中でこちらをうかがっている気配がする

会場が死のように凍りつく

空は真に黒く、外気はまるでよく磨き込まれた鏡のように街を映していた。

（会話を）なにか無理矢理中断したような、おさまりの悪い空気が残った。