初夏の陽光は《…略…》金魚の硝子箱を横から照らして、底の玉石と共に水を虫入り水晶のように凝らしている。

丸いガラスの金魚鉢が置かれ、その中を二匹の赤い金魚が泳いでいた。どこにでもいる普通の金魚で、どこにでもある普通の金魚鉢だった。水の中には決まりごとのように、緑色の藻が浮かんでいた。

蘭鋳は胴は稚純で可愛らしかった。が顔はブルドッグのように獰猛（どうもう）

鰭（ひれ）は神女の裳（も）のように胴（どう）を包んでたゆたい、体色は塗（ぬ）り立てのような鮮（あざや）かな五彩（ごさい）を粧（よそお）い

いまにも水に溶けてしまいそうな淡い紅色がほんのりと水面に浮かぶ

丸いガラスの金魚鉢が置かれ、その中を二匹の赤い金魚が泳いでいた。どこにでもいる普通の金魚で、どこにでもある普通の金魚鉢だった。水の中には決まりごとのように、緑色の藻が浮かんでいた。

（交尾期の金魚は）闘鶏（とうけい）のように互いに瞬間を鋭（するど）く啄（つつ）き合う。

（タツノオトシゴは、）苦しいのか、平気なのか、馬のような顔はいかにも無表情なので、その気持まではわからない。

電気うなぎはしみったれた豆電球をぽつぽつとともしていた。

人が金魚を作って行くのではなく、金魚自身の目的が、人間の美に牽かれる一番弱い本能を誘惑し利用して、着々、目的のコースを進めつつあるように考えられる。