居間から台所に行き、納戸と浴室と洗面所と地下室を調べ、二階の部屋のドアを開けてみた。誰もいなかった。沈黙だけが油のように部屋の隅々にしみこんでいた。部屋の広さによって沈黙の響きかたが少しずつ違っているだけだった。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 ページ位置:86% 作品を確認(amazon)
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室内(空間)が静か
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......りかえった。まるで生あるものの全てが死に絶えてしまったあとのような沈黙だった。僕は本を置いて、これといった理由もなく、家の中を順番にひととおり歩きまわってみた。居間から台所に行き、納戸と浴室と洗面所と地下室を調べ、二階の部屋のドアを開けてみた。誰もいなかった。沈黙だけが油のように部屋の隅々にしみこんでいた。部屋の広さによって沈黙の響きかたが少しずつ違っているだけだった。 僕は一人ぼっちで、生まれてこのかたこれほど一人ぼっちになったことはなかったような気がした。この二日ばかりではじめて強烈に煙草が吸いたくなったが、もちろん煙草は......
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はるか前方の書記席でとり落とした鉛筆の音が傍聴席の隅までとどくほど、寂としている
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
ひっそりとして空家 かと思われるほど
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