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例の六畳で鏡台に向かったが一日一日に変わって行くような自分の顔にはただ驚くばかりだった。少し縦に長く見える鏡ではあるけれども、そこに映る姿はあまりに細っていた。その代わり目は前にも増して大きく鈴を張って、化粧焼けとも思われぬ薄い紫色の色素がそのまわりに現われて来ていた。それが葉子の目にたとえば森林に囲まれた澄んだ湖のような深みと神秘とを添えるようにも見えた。鼻筋はやせ細って精神的な敏感さをきわ立たしていた。ほお傷々いたいたしくこけたために、葉子の顔にいうべからざる暖かみを与えるくぼを失おうとしてはいたが、その代わりにそこには悩ましく物思わしい張りを加えていた。
有島武郎 / 或る女(後編) ページ位置:48% 作品を確認(青空文庫)
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痩せた顔・こけた頬
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前後の文章を含んだ引用
......気分のすさんだ倉地も同じ葉子と同じ心で同じ事を求めていた。こうして二人ふたり底止ていしする所のないいずこかへ手をつないで迷い込んで行った。  ある朝葉子は朝湯を使ってから、例の六畳で鏡台に向かったが一日一日に変わって行くような自分の顔にはただ驚くばかりだった。少し縦に長く見える鏡ではあるけれども、そこに映る姿はあまりに細っていた。その代わり目は前にも増して大きく鈴を張って、化粧焼けとも思われぬ薄い紫色の色素がそのまわりに現われて来ていた。それが葉子の目にたとえば森林に囲まれた澄んだ湖のような深みと神秘とを添えるようにも見えた。鼻筋はやせ細って精神的な敏感さをきわ立たしていた。ほお傷々いたいたしくこけたために、葉子の顔にいうべからざる暖かみを与えるくぼを失おうとしてはいたが、その代わりにそこには悩ましく物思わしい張りを加えていた。ただ葉子がどうしても弁護のできないのはますます目立って来た固い下顎したあごの輪郭だった。しかしとにもかくにも肉情の興奮の結果が顔に妖凄ようせいな精神美を付け加えているのは不思議......
単語の意味
姿・形・容・態・躰・體・軆・骵(すがた)
頬(ほお・ほほ)
紫(むらさき)
姿・形・容・態・躰・體・軆・骵・・・1.身体の形。からだつき。人のからだの格好。衣服をつけた外見のようす。
2.身なり。容姿。
3.目に見える、人の形。人の存在。
4.物の、それ自体の形。物一つ一つの全体的な印象。
5.物事のありさまや状態。事の内容を示す様相。
以下の文字は訓読みで、「すがた」と読める。
[形・容・態・躰・軆・體・骵]
・・・顔の一部。顔の両脇で、口の真横にあるやわらかい部分。ほっぺ。ほっぺた。
・・・1.赤と青を混ぜてできる色。古来、高位の象徴とされた。
2.ムラサキ科の多年草。夏、白い小花が咲く。根からとれる染料は紫色(むらさきいろ)。
3.醤油(しょうゆ)の異称。
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