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体はぼんやり部屋の布団の中に戻り、半分が眠りで白い頭のどこかで、あと何回、ここに生理がくるのかを考え、それから、今月も受精は叶いませんでした、という言葉というかせりふというか漫画のふきだしのような意味合いが暗闇にふわりと浮かんでくるのでそれを見た。それはわたしへ向かってるのか、ただ浮かんでるだけやのか、や、受精、受精ですか、いや、今月も来月も受精の予定は、ないですよ、とわたしはぼんやりした音のない意味で答えます。それから自分の背丈を越えた柱のような巨大な赤鉛筆を抱えて、さらに巨大な紙に、大きなしるしをつけてゆかなければならないというような心象がたちこめて、重さだるさに意識がねっとりと沈んでゆくなか、生きてゆく更新が音もなく繰り返される。わたしの頼りのない声がわたしの中で響いているのが少しずつ聴こえなくなって、次第にどこからもそれが完全に見えなくなる。
川上 未映子「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 ページ位置:68% 作品を確認(amazon)
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前後の文章を含んだ引用
......プキンを棚の上の箱の中から取り出して、股のティッシュを便器に捨てて、ビニルをひっぱりめくって装着してそれをはいた。ああナプキンは股の布団であるな、を思いながら、体はぼんやり部屋の布団の中に戻り、半分が眠りで白い頭のどこかで、あと何回、ここに生理がくるのかを考え、それから、今月も受精は叶いませんでした、という言葉というかせりふというか漫画のふきだしのような意味合いが暗闇にふわりと浮かんでくるのでそれを見た。それはわたしへ向かってるのか、ただ浮かんでるだけやのか、や、受精、受精ですか、いや、今月も来月も受精の予定は、ないですよ、とわたしはぼんやりした音のない意味で答えます。それから自分の背丈を越えた柱のような巨大な赤鉛筆を抱えて、さらに巨大な紙に、大きなしるしをつけてゆかなければならないというような心象がたちこめて、重さだるさに意識がねっとりと沈んでゆくなか、生きてゆく更新が音もなく繰り返される。わたしの頼りのない声がわたしの中で響いているのが少しずつ聴こえなくなって、次第にどこからもそれが完全に見えなくなる。○ 最近はものを見てると頭がいたい、最近はずっと頭がいたい。目から色んなものが、入ってくるのか。目から入ってきたもんは、どっから出ていくのでしょうか。どうやって......
単語の意味
立ち込める・立ち籠める(たちこめる)
体(からだ)
背丈(せたけ)
暗闇(くらやみ)
立ち込める・立ち籠める・・・煙や霧などの気体が、あたり一面を覆う。
体・・・頭・胴・手足など、肉体全体をまとめていう言葉。頭からつま先までの肉体の全部。身体。体躯。五体。健康。体力。
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想像する・イメージするの表現・描写・類語(思考・頭の中の状態のカテゴリ)の一覧 ランダム5
夢は人間とっておきの自由だ。
林芙美子 / 新版 放浪記
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眠りに落ちる・寝つくの表現・描写・類語(睡眠・眠る・寝るのカテゴリ)の一覧 ランダム5
母親に抱かれた子供のように、前後を知らず深い眠りに落ちる
堀 辰雄 / 菜穂子―他五編 amazon
(二度寝)さめぎわの快い眠りにまた静かに落ちて行った。
有島武郎 / 或る女
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生理・月経の表現・描写・類語(健康・体調・病気のカテゴリ)の一覧 ランダム5
生理痛で、立っているのがやっとだった
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
(生理不順)晴れた日や曇った日の不規則な交代のように、その周期の不規則なためらいに
三島 由紀夫 / 美徳のよろめき amazon
月の満ち欠けみたいに几帳面に(規則正しく生理がくる)
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
私たちの身体は機械じかけで、ある程度身体の中が成長すると大人のスイッチが入って、そのしるしに少し血が出る。私は漠然と、そんなふうに思っていた。
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 amazon
生理になるのは卵子が受精しなかったからで、ほんまは受け止めて育てるために準備されてたクッションみたいなものが血と一緒に流れるから。
川上 未映子「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 amazon
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「睡眠・眠る・寝る」カテゴリからランダム5
ベッドに寝かせられると一分ほどで眠りにはいった。エレベーターで際限なく降りていくような落下感があった。
中島 らも / 今夜、すベてのバーで amazon
とぎれがちで夢ばかり見る拷問のような眠り
森 瑤子 / 傷 amazon
「思考・頭の中の状態」カテゴリからランダム5
彼は停電したようにプッツリ意識を失なった。
島田 雅彦 / 聖アカヒト伝「ドンナ・アンナ (新潮文庫)」に収録 amazon
「健康・体調・病気」カテゴリからランダム5
その小さなものはへその緒から滋養を吸い、刻一刻大きさを増していく。生ぬるい暗闇からの脱却を求め、彼女の子宮の壁を蹴っている。それは光と自由を欲している。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
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