螢の大群は、 滝壺 の底に 寂寞 と舞う微生物の 屍 のように、はかりしれない沈黙と死臭を 孕んで光の 澱 と化し、天空へ天空へと光彩をぼかしながら冷たい火の粉状になって舞いあがっていた。
宮本 輝 / 螢川「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 ページ位置:91% 作品を確認(amazon)
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蛍
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前後の文章を含んだ引用
......五百歩も歩いていなかった。何万何十万もの螢火が、川のふちで静かにうねっていた。そしてそれは、四人がそれぞれの心に描いていた華麗なおとぎ絵ではなかったのである。 螢の大群は、滝壺の底に寂寞と舞う微生物の屍のように、はかりしれない沈黙と死臭を孕んで光の澱と化し、天空へ天空へと光彩をぼかしながら冷たい火の粉状になって舞いあがっていた。 四人はただ立ちつくしていた。長いあいだ、そうしていた。 やがて銀蔵が静かにつぶやいた。「どんなもんじゃ、見事に当たったぞォ……」「ほんとに、……凄いねェ」 千......
単語の意味
寂寞(せきばく)
澱(おり)
孕む・妊む(はらむ)
光彩(こうさい)
天空(てんくう)
寂寞・・・人気がなくて、寂しい感じ。心が満たされず寂しい感じ。寂寥。
澱・・・液体の底に沈んだカス。
光彩・・・1.キラキラと輝く光。あざやかな美しい光。美しい輝き。
2.すぐれていて、よく目立つこと。
2.すぐれていて、よく目立つこと。
天空・・・空。大空。
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蛍の表現・描写・類語(夏のカテゴリ)の一覧 ランダム5
炎とも電気とも星や月や太陽ともちがう、これまで見たことのない色と質感の光だった。輪郭があやふやで、触れたときの温度を想像しにくい。冷たいようでも、火傷しそうでもある。そういう光が、ふわふわ漂ったり静止したりしながら、田んぼのあちこちに灯っている。夜を少しだけ照らしだす。
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 amazon
この切ない、 哀しいばかりに蒼く 瞬いている光の塊
宮本 輝 / 螢川「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
蛍が、水面を漂う細い糸のような光の筋を曳(ひ)き、解きつほぐれつしながら漂う
長野 まゆみ / 銀木犀 amazon
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「夏」カテゴリからランダム5
六月半ばだというのに暑い日が続いていた。夏の日のような青嵐が街路樹の枝を揺らし、白いシャツの胸元をはためかせた。秋から冬にかけて曇天しか見せない空もいまは力強く晴れ渡り、直線の陽射しを舗道やビルに注いでいる。
瀬名 秀明 / パラサイト・イヴ amazon
末遠いパノラマのなかで、花火は星水母 ほどのさやけさに光っては消えた。
梶井基次郎 / 城のある町にて
暑い陽が真上にある。道を人がだるそうに歩いていた。
松本 清張 / 真贋の森「松本清張ジャンル別作品集(3) 美術ミステリ (双葉文庫)」に収録 amazon
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