他人の力で目覚めることほど、腹の立つことはない。

はとのくちばしはとがっていて　いたくはないけれど　すばやくつっつく（ここまで夢の描写）　手でかばっても指のすきまから　首とかほっぺた　セーターのあみめの間からも　母さんも止めようとしてくれるが、つっつきはいつまでたっても 　びくりとして起き、眠りのために上がっていた体温が急に冷える。布団の感触や外気の匂いが五感に、さっきまでのは噓だ、これがリアルだと教えてくれる。薄く目を開くと世界は元通りで布団のなかで寝返りをして安心した。どんな夢を見ていたんだっけ。完全に現実だと思っていた夢の世界が急速に遠のいていき、ついさっきまでそのなかにいたのに、どんなだったかもうよく思い出せない。

石の入った俵のように、なかなか起き上らなかった。

魚屋の魚のように淋しい寝ざめなり。

目を覚ましてあたりを見回したとき、自分が今どこにいるのか一瞬わからなかった。それから室内を見回して、そこがホテル一室であることを思い出した。誰かが部屋のドアを叩いている。彼は意識を急いでかき集めながら訪問者は誰か推測した。

（眠れない）電灯をつけて時計を見た。それは二時だったり、三時半だったり、四時四十分だったりした。

しっとり寝たりほんのり起きたりのくりかえし。

のんびり鼻提灯をこさえながら電話番をする

疲労のはて、欲も得もなく眠りこけた。

眠れなかったのだろう、目の下に濃い隈が浮いている。