覆面パトカーは、百キロを超えるスピードで走っていた。

警官のそばに、箱型の赤色警光灯を回転させたままのパトカーが 停 まっていた。

我々は途中で二度警察のパトロール車と出会った。一台は道路のわきにじっと身をひそめており、もう一台は比較的ゆっくりとした速度で背後から我々の車を追い越していった。

ダッシュボードに取り付けられたマイクを握った。拡声装置付きサイレンのスイッチに切り替える。サイレンの音色が変わり、音量が跳ね上がる。 「警察車両が通過します。警察車両が通過します。通行車両は十分にご注意ください──」 　野太い声が車外に響き渡る。交差する道路に連なっていた車列が、渋々という感じで停車する。

（パトカー）無線はコンビニ強盗の至急報をがなっている

エンジンは唸りを四方へビリビリと放つ

ベンツに乗り込むと、タイヤがアスファルトに摩擦する耳障りな音を立てて発進した。

工場のモーターが唸（うな）っている

クラクションが悲鳴のような音を上げる

その巨大な車はビルの玄関前の路上に潜水艦みたいに浮かんでいた。つつましい一家ならボンネットの中で暮せそうなくらい巨大な車だった。