朝の掃除がすんで、じっと鏡を見ていると、蒼 くむくんだ顔は、生活に疲れ荒 さんで、私はああと長い溜息 をついた。壁の中にでもはいってしまいたかった。
林芙美子 / 新版 放浪記 ページ位置:20% 作品を確認(青空文庫)
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疲れた顔
所帯じみる
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前後の文章を含んだ引用
......色の細い蛇が、スイスイと地を這 っている夢を見た。それにとき色の腰紐が結ばれていて、妙に起るときから胸さわぎがして仕方がない。素敵に楽しい事があるような気がする。朝の掃除がすんで、じっと鏡を見ていると、蒼 くむくんだ顔は、生活に疲れ荒 さんで、私はああと長い溜息 をついた。壁の中にでもはいってしまいたかった。今朝も泥のような味噌汁と残り飯かと思うと、支那そばでも食べたいなあと思う。私は何も塗らないぼんやりとした自分の顔を見ていると、急に焦々 してきて、唇に紅々 とべにを......
単語の意味
溜め息・溜息・ため息(ためいき)
溜め息・溜息・ため息・・・気苦労や失望、また、感動したときや緊張がとけたときに、思わず出る大きな息。大息(おおいき・たいそく)。長息(ちょうそく)。
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疲れた顔の表現・描写・類語(顔のカテゴリ)の一覧 ランダム5
みんな申し合わせたようにしわが深く、表情に乏しかった。強烈な太陽と厳しい肉体労働が、彼らの顔から表情を奪いとってしまったようだった。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
女子学生は、非常に老けた、疲れきった表情をしていて、それは病気の鳥のような感じだった。
大江 健三郎 / 死者の奢り amazon
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所帯じみるの表現・描写・類語(人の印象のカテゴリ)の一覧 ランダム5
円顔に近かった彼の顔は、いまでは長形というよりもむしろ瓢簞形の無性格な輪郭を形づくっている。のびやかな顔の肌は失われ、額や頰のくぼみには疲労の跡がたまっている。もっとも三十前後から日本の小市民達の顔の上に現われるあの金銭に対する執着に原因した卑しさはそこにはなかったが、判然とした自分の思想を持ち得ず、あらゆるものを断片的に受け入れてきたもののあの無気力の汚さがただようていた。そして学生時代のあの知識に対する貪欲を証明する美しい眼の輝きはなくなってしまっている。これは一言にして言えば疲れた顔である。肩は張り、骨はごつごつし、以前の柔弱な体つきを全く変えてしまっていた。しかしそれでいて、どことなくよどんだ空気が彼のまわりをとりまいている。
野間 宏 / 残像「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
彼女の変りはてた疲れた姿
野間 宏 / 残像「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
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「顔」カテゴリからランダム5
急に 老けたような、 歳 と本人がずれちゃったような。疲れた顔をしている。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
「人の印象」カテゴリからランダム5
内側に狂気を秘めている
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
白い紙片が風に吹かれて路上を転がって行くような後ろ姿
黒岩 重吾 / 背徳のメス amazon
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