馬車馬のようにまっしぐらに走る

アスファルトの緩い上り坂から橋へと地面が切り替わったとき、それまで右膝ばかりに感じていた重力による苦痛はだいぶ軽減したと、マサルは実感した。《…略…》あらゆる舗装路は水捌けが考慮され、中央部に盛り上がりをもたせ両端は低くしてある。左端を走れば、中央山側に振り下ろす右足にどうしても体重が大きくかかる。

弾丸のように走り出す

韋駄天（いだてん）のごとく逃げて行く。

矢よりも早く走って行く。

両腕を振り子のように振る

腕が枯れ枝のように硬直した老婆

腕（うで）を額に翳（かざ）して、空の雲気を見廻（みまわ）した。軽く矩形（くけい）に擡（もた）げた右の上側はココア色に日焦（ひや）けしている。腕の裏側から脇（わき）の下へかけては、さかなの背と腹との関係のように、急に白く柔（やわらか）くなって、何代も都会の土に住み一性分の水を呑（の）んで系図を保った人間だけが持つ冴（さ）えて緻密（ちみつ）な凄（すご）みと執拗（しつよう）な鞣性（じゅうせい）を含（ふく）んでいる。

両腕を振り子のように振る

女のような艶（なま）めかしい両腕

ほそい骨だけの腕

袖から鬼もひしぎそうな赤銅色の太い腕が逞しく出ている

白いスベスベした腕の肉

乳白色のほっそりした腕

棒のような腕

（散歩）車椅子での散策

メトロノームのように正確な間を刻んだ歩き方

ふらふらと寂しい夢でも見ているような心持ちで歩く

遮二無二突き進んだ。

歩き方もサッサッと若い人のようだ。