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こんどの笑顔は、皺くちゃの猿の笑いでなく、かなり巧みな微笑になってはいるが、しかし、人間の笑いと、どこやら違う。血の重さ、とでも言おうか、生命 の渋さ、とでも言おうか、そのような充実感は少しも無く、それこそ、鳥のようではなく、羽毛のように軽く、ただ白紙一枚、そうして、笑っている。つまり、一から十まで造り物の感じなのである。キザと言っても足りない。軽薄と言っても足りない。ニヤケと言っても足りない。
太宰治 / 人間失格 ページ位置:1% 作品を確認(青空文庫)
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気味の悪い表情・人間味のない表情
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前後の文章を含んだ引用
......もまた、不思議にも、生きている人間の感じはしなかった。学生服を着て、胸のポケットから白いハンケチを覗 かせ、籐椅子 に腰かけて足を組み、そうして、やはり、笑っている。こんどの笑顔は、皺くちゃの猿の笑いでなく、かなり巧みな微笑になってはいるが、しかし、人間の笑いと、どこやら違う。血の重さ、とでも言おうか、生命 の渋さ、とでも言おうか、そのような充実感は少しも無く、それこそ、鳥のようではなく、羽毛のように軽く、ただ白紙一枚、そうして、笑っている。つまり、一から十まで造り物の感じなのである。キザと言っても足りない。軽薄と言っても足りない。ニヤケと言っても足りない。おしゃれと言っても、もちろん足りない。しかも、よく見ていると、やはりこの美貌の学生にも、どこか怪談じみた気味悪いものが感ぜられて来るのである。私はこれまで、こん......
単語の意味
巧み・工・匠(たくみ)
笑顔(えがお)
猿(さる)
巧み・工・匠・・・テクニック。技術、芸術的な工夫。また、それらのワザを持った人。
笑顔・・・笑っている顔。笑みを含んだ顔。にこにこ顔。
猿・・・1.ヒト以外の霊長類の総称。人間に似た哺乳動物。後ろ足でたったり前足で物を握ったりできる。音が「去る」と同じで忌み嫌われ、反対の意味の「得る」からエテ(得手)と代替することもある。
2.雨戸の桟(さん)に取り付けた戸締り道具。
3.囲炉裏(いろり)の自在鉤(じざいかぎ)を上げてとめておく用具。
2.雨戸の桟(さん)に取り付けた戸締り道具。
3.囲炉裏(いろり)の自在鉤(じざいかぎ)を上げてとめておく用具。
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どこか怪談じみた気味悪いものが感ぜられて来る
太宰治 / 人間失格
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雲間から再び太陽が顔を出したような感じで、晴ればれと温かく屈託のない微笑
森 瑤子 / 風物語 amazon
自分に帰り切らないような顔つき
有島武郎 / 生まれいずる悩み
今までの打ちとけた調子から突然、目がきびしくなった。店の照明が一段落ちたような感じだった。おや? と智明は思い、ためしに話題を変えてみた。すると彼女はまた花のようにぱっと明るくなった。 うーん、ルームライトのような 奴 だ、と智明は思った。
吉本ばなな / サンクチュアリ「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon
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