炎とも電気とも星や月や太陽ともちがう、これまで見たことのない色と質感の光だった。輪郭があやふやで、触れたときの温度を想像しにくい。冷たいようでも、火傷しそうでもある。そういう光が、ふわふわ漂ったり静止したりしながら、田んぼのあちこちに灯っている。夜を少しだけ照らしだす。
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 ページ位置:41% 作品を確認(amazon)
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蛍
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......虫だ。近くの稲にとまった蛍を、顔を近づけて眺めてみる。淡く光ると、小さく黒い虫の姿が一瞬だけあらわになる。本当に尻が光っている。すぐに闇に溶けこみ、また光る。 炎とも電気とも星や月や太陽ともちがう、これまで見たことのない色と質感の光だった。輪郭があやふやで、触れたときの温度を想像しにくい。冷たいようでも、火傷しそうでもある。そういう光が、ふわふわ漂ったり静止したりしながら、田んぼのあちこちに灯っている。夜を少しだけ照らしだす。 さっき感じた怖さは、もう消えていた。「ここいらにおるのは、平家蛍や」 とヨキは言った。「これからどんどん数が増えるで。恋の季節やな」 横目でヨキをうかがう。に......
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暁の光の中に最後の光を霞のように融けこませ蛍が死んでいく
連城 三紀彦 / 恋文 amazon
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照りつける陽光から存分に栄養を吸った稲が、青々と地を埋め尽くす夏
奥泉光 / 三目の鯰「石の来歴」に収録 amazon
やわらかな新緑に体ごと染まってしまいそうな初夏
竹西寛子 / ひとつとや amazon
夏が最後の生命を振り絞っているような暑い日が続く
谷村志穂 / ハウス amazon
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