純粋培養の花のような危うさがある少女

日かげの花のように誰に知られずこっそりと大きくなった少女

妖精のように目まぐるしく、生き生きとして、魅力的な娘

秋の花のような娘

花見帰りの金魚のようなお嬢さん

（十九歳）少女と女との谷間の空に風船のように浮かんでいる年齢

昆虫が蝶になって、繭（まゆ）を食い破って飛び出ようとするのに似た青春の一時期

ちょろちょろと走り回る幼女のどったんばったん

（少女の肩を抱く）睦子に近づき父親のように肩を抱いた。肩は細く、まだ子供で、ダブダブの私の上衣越しに背中を撫でると、背中の肉も薄かった。

日かげの花のように誰に知られずこっそりと大きくなった少女

（交際）これまで私は誰かと親しい関係になるたび、自分が少しずつ取り替えられていくような気分を味わってきたからである。 　相手の思考や、相手の趣味、相手の言動がいつのまにか自分のそれに取って代わり、もともとそういう自分であったかのように振る舞っていることに気付くたび、いつも、ぞっとした。やめようとしても、やめられなかった。おそらく、振る舞っている、というような生易しいものではなかったのだろう。 　男たちは皆、土に染み込んだ養分のように、私の根を通して、深いところに入り込んできた。新しい誰かと付き合うたび、私は植え替えられ、以前の土の養分はすっかり消えた。それを証明するかのように、私は過去に付き合ってきた男たちと過ごした日々を、ほとんど思い出せないのである。また不思議なことに、私と付き合う男たちは皆、進んで私の土になりたがった。そして最後は必ず、その土のせいで根腐れを起こしかけていると感じた私が慌てて鉢を割り、根っこを無理やり引き抜いてきたのだった。 　土が悪いのか、そもそも根に問題があるのか。 　旦那と結婚すると決めた時、いよいよ自分がすべて取り替えられ、あとかたもなくなるのだ、ということを考えなかったわけではない。

（ニューハーフの父と息子が）あまりに淡々と普通の親子の会話をするので、私は目まいがした。「奥さまは魔女」みたいだ。不健康きわまりない設定の中で、こんなに明るいんですもの。

慎ましやかな色気が滲み出ている

女性の漿液（しょうえき）の溢（あふ）れるような女

（幼児になった睦子）色の白い──目が、いや口も鼻も耳も、なにもかもが睦子の精巧な人形のように小さくて可愛らしくて、こわれてしまいそうに見えた。