空にはながらく動かないでいる巨 きな雲があった。その雲はその地球に面した側に藤紫色をした陰翳 を持っていた。そしてその尨大 な容積やその藤紫色をした陰翳はなにかしら茫漠 とした悲哀をその雲に感じさせた。
梶井基次郎 / 蒼穹 ページ位置:1% 作品を確認(青空文庫)
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悲しい・悲しみ
雲
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前後の文章を含んだ引用
ある晩春の午後、私は村の街道に沿った土堤の上で日を浴びていた。空にはながらく動かないでいる巨 きな雲があった。その雲はその地球に面した側に藤紫色をした陰翳 を持っていた。そしてその尨大 な容積やその藤紫色をした陰翳はなにかしら茫漠 とした悲哀をその雲に感じさせた。 私の坐っているところはこの村でも一番広いとされている平地の縁 に当っていた。山と溪 とがその大方の眺めであるこの村では、どこを眺めるにも勾配のついた地勢でないものはなかった。風景は絶えず重力の法則に脅かされていた。そのうえ光と影の移り変わりは溪間にいる人に始......
単語の意味
藤紫色(ふじむらさきいろ)
悲哀(ひあい)
茫漠(ぼうぼく)
陰影・陰翳(いんえい)
藤紫色・・・藤色(薄い紫色)よりも紫がかった色。藤色と同じ意味で用いる場合もある。
悲哀・・・悲しく哀れなこと。
茫漠・・・ただ広いだけで無駄な感じ。ぼやけていて不明瞭な感じ。「茫」は「果てしなく広いさま」「ぼんやりしたさま」をあらわす字。
陰影・陰翳・・・1.影のこと。日が当たっていない暗いところ。
2.1が転じて、具体的に説明されていない部分。味わうことで理解できる、変化や含み。ニュアンス。「陰影に富む文章」
2.1が転じて、具体的に説明されていない部分。味わうことで理解できる、変化や含み。ニュアンス。「陰影に富む文章」
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雲は岩のように低く垂れ
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
薄明るい空に、だんだらになった白い雲が、卵の白身のように泡立っている。
林 芙美子 / 骨「新潮日本文学 22 林芙美子集 放浪記・稲妻・浮雲・風琴と魚の町・清貧の書・泣虫小僧・牡蠣・晩菊・骨・下町」に収録 amazon
水彩画家が好みそうな雲が空に淡くたなびいている。ブラシの繊細なタッチが試されるところだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
連山の湧き出たごとく、海原にかかる大瀑布のごとく、横にのびた巨大な渦巻く雲
阿川 弘之 / 雲の墓標 amazon
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期待に裏切られた失望のために、いらいらしかけていた神経のもどかしい感じがさらにつのるのを覚えた。
有島武郎 / 生まれいずる悩み
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金色の油をといたような月
林 芙美子 / 晩菊・水仙・白鷺 amazon
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