接吻を、春雨のように頭から浴びてみたい

舌と舌の柔らかさが触れ合う。

私は自分の舌を伊吹の口の中に差し込んで、洗濯機みたいにぐるぐる回した。私の舌と伊吹の舌が、脱水されてるみたいに、水を流しながら口の中で絡み合って回った。

水島の舌はとても長い。この舌こそが特別だ。十和子が自分自身の舌では決して触れられないような場所に届き、二つの口から大量の唾液が溢れ出る。舌の付け根をえぐられるとアーという発声がどうしてもエーになってしまう。

私の口のほうに二人の舌があるのは初めてのことだった。私は伊吹の舌を奏でるように、伊吹の口の中をゆっくりと泳いだ。何で舌を絡めるのか、初めてわかったような気がした。 　唾液が震えて、私の感情と一緒に、伊吹の中に流れ込んでいく。

（悲しみを紛らわすために抱かれる）──もっときつくわたしを閉じ込めて下さい。わたしの身体の奥にできた、腫瘍のような涙の塊を砕いて下さい。──

ペニスを何度か動かして、そして何の予兆もなく突然射精した。それは押しとどめようのない激しい射精だった。

心の底でひそかに愛慕を寄せる

静寂はサユリの小さな呻き声によって壊された。それは、彼女のものとは思われないほど、か細い声だった。声は断続的にふわふわと現れ空中を舞った。

邦彦はそれ（女の唇）を自分の前歯で軽く 噛んだ。