(夜の谷川の音)ごおっという音が足下から起こる。それは杉林の切れ目だ。ちょうど真下に当る瀬の音がにわかにその切れ目から押し寄せて来るのだ。その音は凄 まじい。気持にはある混乱が起こって来る。大工とか左官とかそういった連中が溪のなかで不可思議な酒盛りをしていて、その高笑いがワッハッハ、ワッハッハときこえて来るような気のすることがある。
梶井基次郎 / 闇の絵巻 ページ位置:86% 作品を確認(青空文庫)
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川の音(せせらぎ)
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前後の文章を含んだ引用
......が闇のなかである。なんという暗い道だろう。そこは月夜でも暗い。歩くにしたがって暗さが増してゆく。不安が高まって来る。それがある極点にまで達しようとするとき、突如ごおっという音が足下から起こる。それは杉林の切れ目だ。ちょうど真下に当る瀬の音がにわかにその切れ目から押し寄せて来るのだ。その音は凄 まじい。気持にはある混乱が起こって来る。大工とか左官とかそういった連中が溪のなかで不可思議な酒盛りをしていて、その高笑いがワッハッハ、ワッハッハときこえて来るような気のすることがある。心が捩 じ切れそうになる。するとそのとたん、道の行手にパッと一箇の電燈が見える。闇はそこで終わったのだ。 もうそこからは私の部屋は近い。電燈の見えるところが崖の曲......
単語の意味
不可思議(ふかしぎ)
左官(さかん・しゃかん)
大工(だいく)
不可思議・・・1.数の単位のひとつ。10の64乗。古くは、10の19乗。元は仏教用語で「測り知れないもの」という意味。
2.人の理解を超えた、測り知れないもの。言葉では表現できないもの。不思議。異様。
2.人の理解を超えた、測り知れないもの。言葉では表現できないもの。不思議。異様。
左官・・・壁を塗る職人。壁塗り。泥工(でいこう)。宮廷工事の際、特別な地位や肩書きのない職人は宮域内に入ることができないので、仮に木工寮(もくりょう[=宮廷工事を担当する役所])の属(さかん[=位のひとつ])という官位を与え、出入りを許可したのが名前の由来。「左官」は当て字。
大工・・・建物の建築や修理をする職人。また、その仕事。とくに木造の建物を扱う者をいう。。「工」は訓読みで「たくみ(=匠)」と読め「職人」「物を作る人」のこと。
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沖では激怒した潮が波がしらに白いウサギを飛ばしながら走っている
開高 健 / 地球はグラスのふちを回る amazon
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