乾いた音が遠くに聞こえる。花火の空砲の音だ。夏祭りを告げる音だ。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 ページ位置:46% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
打ち上げ花火
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......「いやいや、一撃めは、強烈なアッパーカットだと思いますね」 下から突き上げるあたしの拳を片手で受け止め、スウちゃんが笑う。見慣れた、いつものスウちゃんだった。 乾いた音が遠くに聞こえる。花火の空砲の音だ。夏祭りを告げる音だ。小さい頃は、あの音を聞くたびにわくわくした。城下町の例に漏れず、この街の祭りも古い歴史を持つ。秋祭りのように、神輿もだんじりもないけれど、夜空に花火が咲く。花火......
ここに意味を表示
打ち上げ花火の表現・描写・類語(夏のカテゴリ)の一覧 ランダム5
満天にひらく名花
吉川英治 / 銀河まつり
花火は一滴一滴が息を呑むほど煌いて、大輪の雫はたちまち消えてしまった。
宮本輝 / 二十歳の火影 amazon
よく晴れた夜空を覆い尽くすように、巨大な菊型の花火が炸裂した。手を伸ばせば届きそうなほどの近さだった。光の玉が一瞬のうちに視野いっぱいにまで広がってゆく。きらきらとした火の粉が今にも顔面へ降りかかってきそうだった。横に目をやると、浅倉佐知子が瞳を大きく開けて空を見つめていた。花火が赤や緑へと色彩を変えるたびに、菊や滝が空一面に広がるたびに、浅倉の頬は様々な色に変化していった。
瀬名 秀明 / パラサイト・イヴ amazon
この玉から彼が苦心の赤光 が放てなかったら
吉川英治 / 銀河まつり
このカテゴリを全部見る
「夏」カテゴリからランダム5
暮れ鈍る夏の宵の光りが、景物をほの黒く浮かせる
川端康成 / 掌の小説 amazon
舞台とは反対の方面で、しきりに花火を揚げる。花火の中から風船が出た。帝国万歳とかいてある。天主の松の上をふわふわ飛んで営所のなかへ落ちた。次にぽんと音がして、黒い団子が、しゅっと秋の空を射抜くように上がると、それがおれの頭の上で、ぽかりと割れて、青い煙が傘の骨のように開いてだらだらと空中に流れ込んだ。風船がまた上がった。
夏目 漱石 / 坊っちゃん amazon
キリギリスがあちらこちらで、かすれた声をあげて鳴いている。それを聞いているのはひどく息苦しかった。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
腿の匂いが暑気にむせ返るような夏の日
阿部昭 / 桃 amazon
「空・中空」カテゴリからランダム5
(切り損って薄切りの半月になった大根のような昼の月)「あの月、大根みたいじゃない? 切り損った薄切りの大根」
向田邦子 / 大根の月「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 amazon
月の光の下では何もかもが青ざめて見える。どんなものにも価値も意味も方向もないように思える。影さえもが不確かだ。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
どこからか迷い出して落ちつく場所を見出しかねて困っているような白い雲
長塚 節 / 土 amazon
同じカテゴリの表現一覧
夏 の表現の一覧
空・中空 の表現の一覧
風景表現 大カテゴリ