夕方の門燈（あかり）が薄明るくついていて、むかし信州の山で見たしゃくなげの紅（あか）い花のようで、とても美しかった。

宝石箱の中身をばら撒いたような街の灯り

街灯が光の輪を路地に落とす

自分の影を両側の街燈が次には交互にそれを映し出した。後ろから起って来て前へ廻り、伸びて行って家の戸へ頭がひょっくり擡（もちあが）ったりする。慌（あわただ）しい影の変化を追っているうちに自分の眼はそのなかでもちっとも変化しない影を一つ見つけた。極く丈の詰った影で、街燈が間遠になると鮮（あざや）かさを増し、片方が幅を利かし出すとひそまってしまう。「月の影だな」と自分は思った。見上げると十六日十七日と思える月が真上を少し外れたところにかかっていた。自分は何ということなしにその影だけが親しいものに思えた。

等間隔の街灯

斜光の中をホコリが煙のように舞う

ゼラチンの膜で覆われたような光沢

弟は朝の光のなかで荷造りをしていた。

太陽が彼女の身体を照らし、その背後に長い影を作っている。僕たちの影よりも数倍は大人びていた彼女は一歩も二歩も人生を先へ進んでいるのかもしれないな、なぜかそう思えた。

ガラスで跳ね返った光が視野を塞ぐ

（砲声）音と煙が川の方の空に満ちていた。 炸裂 音 がその空を狭くし、ぐいとこっちへ近づけた。砲声は激しく、間近になり、ゴロゴロと遠雷のような 唸りが交り始めた。

小屋がけの見世物やの灯が、ほおずきみたよに見えましてなァ

営利会社三立化学は、海底の岩の間に住んでいる貪欲な蛸（たこ）かなにかのように、餌になりそうなもののある方向へ絶えず触手を伸ばして

街灯が間が抜けて見えるほど街が明るい

むき出しの外階段がらせん状に昇っている