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街はしんとしていて、目を覚ましているのは自分だけなような気がした。
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 ページ位置:90% 作品を確認(amazon)
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夜のしじま(静けさ)
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前後の文章を含んだ引用
......少し驚いて、はしゃぐ父を見た。 その夜、私は眠れずに、誰もいないリビングへ降りてテレビを観ていた。ホットミルクを飲みながらぼんやりと深夜番組の映画を観ていた。 街はしんとしていて、目を覚ましているのは自分だけなような気がした。 映画の中で、女優が、突然男優にキスをした。 私はぼんやり画面を見つめた。互いに食べ合うみたいに、口を動かしている。自分が行っていた、舌で暴れるような口づけとは......
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マンションの一部屋の明りが点いたり、消えたり、締め忘れた水飲み場の蛇口から水滴が落ちたり、K君の髪先が風にゆらめいたりするくらいしか、風景の中で動いているものはなかった。ひそやかな夜の息遣いが、聞こえてきそうだった。
小川洋子 / 冷めない紅茶「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
ビーチ・ボーイズのテープがひととおり終わったので、僕はボタンを押してテープを取り出した。あたりが急にしんとした。車のタイヤが薄い水の膜をはねるシュウウウッという均一な音が聞こえるだけだった。真夜中なんだ、と僕は思った。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
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