規則正しい健康な寝息

蠎蛇（うわばみ）のような鼾を掻き

先に竜一郎の寝息が聞こえてきたとき、まだ少し意識があった。子犬に腕時計をくっつけておくと安心して眠るように、そのリズムは子守歌になって私を包み込んだ。

母上は疲れ果てたように、間もなく破れた草笛のような、かすれた小さい寝息を立てて眠った。

グワッ！という大きなイビキ

深い鼾睡（かんすい）に陥る

謙作は半分覚めながら夢を見ていた。

眠気は海底地震によって生じた無音の波のように僕のボートを鈍く揺さぶっていた。

闇を見つめて悶々としているうちに、じりじり時間がたっていく。　夜中の一時近くなって、やっと眠気の尻っ尾をつかんだような気がした。それを慎重にたぐり寄せていく。ドブネズミのようなその長い尾を引いていくと、その先に短い夢があった。灰色の淋しい街の風景のような、一瞬の夢。

あれ、と思った時にはアスファルトに座り込んでいた。頭がぐんと重くなり、顔の筋肉が弛んだ。瞼が閉じてくる。夜空の藍色と杉林の黒が混じり、車道の無機質な灰色と合わさったかと思うと頭がその色で染まる。