この建物の中では時間は奇妙な流れ方をしていた。居間に置かれた旧式の柱時計と同じだ。人々が気紛れにやってきては分銅を巻きあげる。分銅が上っている限り、時はコツコツと音を立てて流れる。しかし人々が去り分銅が下りてしまうと時はそこで止まる。そして静止した時の塊りが床の上に色あせた生活の層を積み上げる。

尻尾をくわえた蛇のような長ったらしい告白

胸がつぶれるほど長い時間

（延長）十二時の針をひっぱっていた。

病院の廊下のように長く続いた夜

なめくじが地面を匐（は）うほどののろさ

周囲の世界は少しのこだわりもなくずるずると平気で日常の営みをしていた。

徹夜をして、明け方ばったり眠った。

まる一日、何も予定はない。

信号で停車する。ウィンカーの焦れるようなせっかちな音が、久遠たちを急かしているようだった。