胸のひろがるような爆音が、同時に、初秋の夜空をいっぱいにどかアんと鳴った。五ツの銀光星が北斗のように斜めに浮游することしばらく、やがて、その五ツの星が個々にばらばらと炸裂 すると、あざやかな光傘をサッと重ねて、冠 、鏡台 、姥捨 の山々を真っ青に浮かせて見せたかと思うと、その一つの星の色が、臙脂 から出た人魂のように、ぽかあ、と瞬間――ほんの瞬間、真っ赤な光を千曲川の水面に映した。 ――夢だ! 夢みるような気もちなのだ。
吉川英治 / 銀河まつり ページ位置:91% 作品を確認(青空文庫)
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打ち上げ花火
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前後の文章を含んだ引用
......と首をつき出して、その筒ぐちを覗いたのである。 異様な音響がした。 火と、血と、筒の裂けるような音! とたんに、慎吾の首は、形を失って、宙天へ飛んでしまった。 胸のひろがるような爆音が、同時に、初秋の夜空をいっぱいにどかアんと鳴った。五ツの銀光星が北斗のように斜めに浮游することしばらく、やがて、その五ツの星が個々にばらばらと炸裂 すると、あざやかな光傘をサッと重ねて、冠 、鏡台 、姥捨 の山々を真っ青に浮かせて見せたかと思うと、その一つの星の色が、臙脂 から出た人魂のように、ぽかあ、と瞬間――ほんの瞬間、真っ赤な光を千曲川の水面に映した。 ――夢だ! 夢みるような気もちなのだ。 誰もなんにもいうものがない。 上を向いたまま。 腕をくんだまま……。 なんとすばらしい火の美だろう、恐い魔術だろう、瞬間の光焔の中には見上げたものの魂がみんな......
単語の意味
臙脂色・燕脂色(えんじいろ)
秋の夜(あきのよ)
初秋(しょしゅう・はつあき)
銀光(ぎんこう)
夜空(よぞら)
胸(むね)
暫く・姑く・須臾(しばらく)
臙脂色・燕脂色・・・黒がかった赤色。濃い暗めの赤色。
秋の夜・・・秋の季節の夜。とくに、秋の夜の長いことをいう。
初秋・・・秋の初めごろ。新秋(しんしゅう)。陰暦7月の異名。孟秋。
銀光・・・銀色の光。
夜空・・・夜の空。
暫く・姑く・須臾・・・1.長いと感じるほどではないが、すぐともいえないほどの時間。ちょっとの間。一時的。
2.ちょっと待った!
2.ちょっと待った!
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おてんとうさまよ。どうして、そんなに、じりじりと暑く照りつけて苦しめるのですか? 暑い。全く、暑くて悶死 しそうだ。どっかに、巨 きな水たまりはありませんかね。鯨の如く汐を噴いてみたいのですよ。
林芙美子 / 新版 放浪記
ライラックの花束のような初夏の明るさ
川端康成 / 掌の小説 amazon
夏はたけなわである。烈しい太陽光線にはほとんど憤怒があった。
三島由紀夫 / 真夏の死 amazon
人のいないグランドは草の匂いがした。
吉本 ばなな「N・P (角川文庫)」に収録 amazon
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アタリノ山々ガ浮キアガッタカト思ワレルクライ空ガ美シイ
有島武郎 / 生まれいずる悩み
月が、うらうらと靡(なび)いた霧の中に、まるで爪の痕かと思うほど、かすかに白く浮んでいる
芥川 龍之介 / 蜘蛛の糸・杜子春 amazon
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