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こうやってひとは死ぬんだと思った。残された者の両手にありあまるほどの「そのひと」を残したまま、そのひとはもう二度とひっくり返されることのない砂時計になる。やがて記憶はどんどんこぼれていく。両手に何もなくなっても、もう、そのままだ。
朝井 リョウ / 僕は魔法が使えない「もういちど生まれる (幻冬舎文庫)」に収録 ページ位置:64% 作品を確認(amazon)
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喪失感(大切なものを失う)
死ぬ
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......に入って、真っ白な便座の上に座ったとき、そのあたたかさにはじめて涙が出た。涙を拭いたトイレットペーパーはすぐに溶けて、小さくまとまって頬にしつこくくっついた。 こうやってひとは死ぬんだと思った。残された者の両手にありあまるほどの「そのひと」を残したまま、そのひとはもう二度とひっくり返されることのない砂時計になる。やがて記憶はどんどんこぼれていく。両手に何もなくなっても、もう、そのままだ。 頭の中で流れ続けていた「さらばピアノよ」は、棺の中の父さんを触ったときにやっと鳴りやんだ。もう生きていないのですよ、と耳元でそっとささやかれるような肌の冷たさ......
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自分の中の最も大切な部分をごっそりと削り取られてしまったような空虚感を抱えている。それで、バランスが崩れてしまって、今はふらつきながら辛うじて立っているような状態だった。
平野啓一郎「ある男」に収録 amazon
(自殺した友子)そしてわかった。自分が実は友子を恨んでいるということ。あの夜彼女は自分の言いたいことだけ言い、思い残すことなくこの世を去り、智明の心だけがあの夜の中に置き去りにされたこと。
吉本ばなな / サンクチュアリ「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon
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訪れた者たちは、次々に飛んで行ってしまった。流れ星のようにどこかに消えてしまったのだろうか。
大庭 みな子 / 啼く鳥の amazon
自分の前から永久に姿を消してしまった友
宮本 輝 / 螢川「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
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気の強い人ならきっと自殺をしたのだけれど、温和しい人だけにそれも出来なかったのだ。
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