干した二枚の下着が重そうに雨に打たれている。

乱れた白髪のような秋の長雨

踊っている連中も雨を結局よい刺戟にして空を仰いで馬鹿笑いしたり、ひょうきんに首を縮めたりして調子づいて揉み合っている。

降り方も平均してきて、どっしり腰をすえて降っている

コンクリートや草が濡れ冷やされていくときの匂いがする

暗い野に、遠く赤い火が見えた。何の 灯ひ であろう。雨の密度の変移に従って、暗く明るくまたたき、または深い水底に沈んだように、 暈かさ だけになった。

風は止んだ。多摩川の川づらには狭霧（さぎり）が立ち籠（こ）め生あたたかくたそがれて来た。

雨から身をよけることはできない。犬たちはみんな尻の穴までぐしょ濡れになり、あるものはバルザックの小説に出てくるカワウソのように見え、あるものは考えごとをしている僧侶のように見えた。

小石くらいの大きさの雨粒が音を立てて路面を叩く

池の水の面には雨が描き出す小さな波紋が、音もなく夢のように数限りもなくちらちらと入り乱れていた。