花曇りに暮れを急いだ日は疾 く落ちて、表を通る駒下駄の音さえ手に取るように茶の間へ響く。隣町 の下宿で明笛 を吹くのが絶えたり続いたりして眠い耳底 に折々鈍い刺激を与える。外面 は大方朧 であろう。
夏目漱石 / 吾輩は猫である ページ位置:34% 作品を確認(青空文庫)
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春の夕方・夜
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前後の文章を含んだ引用
......かになった。主人は例のごとく書斎へ引き籠 る。小供は六畳の間 へ枕をならべて寝る。一間半の襖 を隔てて南向の室 には細君が数え年三つになる、めん子さんと添乳 して横になる。花曇りに暮れを急いだ日は疾 く落ちて、表を通る駒下駄の音さえ手に取るように茶の間へ響く。隣町 の下宿で明笛 を吹くのが絶えたり続いたりして眠い耳底 に折々鈍い刺激を与える。外面 は大方朧 であろう。晩餐に半 ぺんの煮汁 で鮑貝 をからにした腹ではどうしても休養が必要である。 ほのかに承 われば世間には猫の恋とか称する俳諧 趣味の現象があって、春さきは町内の同族共の......
単語の意味
暮れる(くれる)
花曇り(はなぐもり)
外面(そとづら・がいめん・げめん)
暮れる・・・1.太陽が沈んで外が暗くなる。⇔明ける。
2.季節や年が終わる。「年が暮れる」
3.同じことの繰り返しや、同じ気持ちのままで時間を過ごす。「涙に暮れる」
昏れる・眩れる・暗れる・闇れる、とも書く。
2.季節や年が終わる。「年が暮れる」
3.同じことの繰り返しや、同じ気持ちのままで時間を過ごす。「涙に暮れる」
昏れる・眩れる・暗れる・闇れる、とも書く。
花曇り・・・桜の花が咲く頃の、薄ぐもりの天気。また、その時期の曇りがちの薄明るい日。
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