白い渦巻きのように音も無くカモメの群れが舞っている

鴎（かもめ）が群れをなして猫（ねこ）に似た声でなきながら

海からはもう浜猫が飛んでき、ぬるんだ田の上を、白木綿をちぎったように飛びまわっていた。

欲望をむきだしにしたしつこく甘えかかるような鷗（かもめ）の鳴き声

絞ったまま乾いた汚れ雑巾のようなカモメの体（死体）

橋の上から見ると、滑川（なめりがわ）の水は軽く薄濁って、まだ芽を吹かない両岸の枯れ葦（あし）の根を静かに洗いながら音も立てずに流れていた。それが向こうに行くと吸い込まれたように砂の盛（も）れ上がった後ろに隠れて、またその先に光って現われて、穏やかなリズムを立てて寄せ返す海べの波の中に溶けこむように注いでいた。

（満月出ている夜の浜辺）暗くなってきたら、浜は彼岸の世界みたいにしんと不思議な光に満ちてきた。ここからは夜の神様の世界だ、と私は思った。人間がうろうろしないほうがいい時間だ。

新しく掘った用水があって、欄干（らんかん）のない橋がかかっていた。

どうどうと水の流れる音

（焚火は）静かな水に 映って二つに見えていた。