銀行からの逃走経路を下見していた。 一週間もの間、同じコースを何度も運転しつづけていた。 頭の中に、無数の注釈をつけた地図とタイムテーブルを作成する。そういう感覚だった。 交差点の場所や道路の平均的な混み具合、信号の変わる間隔、歩行者の量を頭に叩き込んでいく。どの経路でどの程度の速度で走れば、すべての信号を青で走りぬくことができるのか、それを調べていた。
伊坂 幸太郎「陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)」に収録 ページ位置：7% 作品を確認（amazon）
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......た信号を見ながら、ハンドルを左へ切った。 港洋銀行の入り口正面からスタートして三百六十三秒。カウントしている時間を確認する。アクセルを踏み込み、速度を上げる。 銀行からの逃走経路を下見していた。 一週間もの間、同じコースを何度も運転しつづけていた。 頭の中に、無数の注釈をつけた地図とタイムテーブルを作成する。そういう感覚だった。 交差点の場所や道路の平均的な混み具合、信号の変わる間隔、歩行者の量を頭に叩き込んでいく。どの経路でどの程度の速度で走れば、すべての信号を青で走りぬくことができるのか、それを調べていた。 前方に近づいてくる信号機が赤から青に切り替わった。予定どおり。 雪子は、精巧な体内時計を持っている。 自分だけの特別な能力なのだと気づいたのは、十代の中ごろだ......
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あらかじめ戦場を見廻って地形を飲み込んでおく
夏目漱石 / 吾輩は猫である
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自分の家のある方向を指さそうとしたが、いったいそれが正確にどちらの方向に位置しているのか僕にはわからなくなっていた。奇妙な角度に折れまがった曲り角をいくつも通り抜けてきたせいだ。
村上春樹 / ねじまき鳥と火曜日の女たち「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
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