家に帰って、少し寝た。 　目覚めると、雨が 止んでいて、夜だった。暗い部屋が少しさみしかった。 　こういうときいつもおかしな気持ちになる。いつの間にか夜になっている。夢の中で誰かに何かを言い忘れたみたいに思う。 　しばらくの間、波打ちぎわにうちあげられた魚みたいに横たわって窓を見ていた。

夏服の白いシャツに浮き出ているふたつの肩甲骨が、大地の寝息のリズムに合わせて上下している。

（現実の世界と夢の世界の）二つの異なった世界が、彼女の意識を無音のうちに奪い合っている。まるで大きな河口で、寄せる海水と流れ込む淡水がせめぎ合うように。

ごろりと横になり、古畳の上で腐ったようにうとうと

眠りの浅瀬にただ打ち上げられたように横たわっていた。

普通の熟睡の程度をズット通り越して、死の世界の方へ近付いて行くので、当り前のユスブリ方や怒鳴り声では絶対に眼を醒まさない所謂（いわゆる）、死人同様の状態

外の世界と自分の世界を厳密に隔てるように、掛け布団を首まで引っ張り上げた。

襟もとまですっぽり絹蒲団をかぶって、朽ち木のように寝ている

昏々

子を真ん中にして、親子が川の字に眠る