パンの中で、一番真面目なパンはどれか。 それはまちがいなく食パンである。 身辺を飾ることなく、虚飾を排し、自らは語らず、無欲恬澹、媚びず、へつらわず、ただこげ茶色に日焼けして静かに端座している。 その風貌は、まさにパン界の実直代表といえる。 他のもろもろのパンたちの、小賢しい小細工、おもねり、目立とう精神を一蹴して、威風堂々、自信に満ちあふれている。 奇をてらわぬ実質本位のその形からも、真面目ひとすじ、朴訥、愚直ともいえる生き方が感じられる。 〝食パン〟という名前もいい。 面白くもなんともないところがいい。 食パンの〝食〟は、主食の食である。 「箱形の型を使って焼いた主食用のパン」と広辞苑に出ている。 主食を担っている、という自信が、小賢しい細工を放棄させているのかもしれない。
東海林 さだお「タコの丸かじり (文春文庫)」に収録 ページ位置:92% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
食パン
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......男のほうもえんえん長蛇の列であった。この行列は、一見宝くじ発売の行列に似ていた。ただこの行列には、希望がないという点が少し違っていた。伝統を誇る菓子パンを総括 パンの中で、一番真面目なパンはどれか。 それはまちがいなく食パンである。 身辺を飾ることなく、虚飾を排し、自らは語らず、無欲恬澹、媚びず、へつらわず、ただこげ茶色に日焼けして静かに端座している。 その風貌は、まさにパン界の実直代表といえる。 他のもろもろのパンたちの、小賢しい小細工、おもねり、目立とう精神を一蹴して、威風堂々、自信に満ちあふれている。 奇をてらわぬ実質本位のその形からも、真面目ひとすじ、朴訥、愚直ともいえる生き方が感じられる。〝食パン〟という名前もいい。 面白くもなんともないところがいい。 食パンの〝食〟は、主食の食である。「箱形の型を使って焼いた主食用のパン」と広辞苑に出ている。 主食を担っている、という自信が、小賢しい細工を放棄させているのかもしれない。 食パンの次に真面目なのが、いわゆる調理パンである。 彼らも実に真面目だ。食パンとは別の意味で真面目である。 ホットドッグ用のパンなどに、コロッケやハムカツ、焼......
単語の意味
虚飾(きょしょく)
愚直(ぐちょく)
朴訥・木訥(ぼくとつ)
風貌(ふうぼう)
賢しい(さかしい)
虚飾・・・虚(うつ)ろ(=からっぽ)な飾り。中身のない上っ面だけの飾り。実質が伴わないのに、外見だけいいように飾ること。見栄。
愚直・・・正直すぎて、臨機応変の対応ができなかったり、そんな役回りばかりすること。また、そのさま。ばか正直。
朴訥・木訥・・・かっこつけたりせず、口数が少ないこと。洗練されたところが無く、話すことが得意でないこと。また、そのさま。
風貌・・・風(ふう)と貌(かお)。風采と容貌。姿かたち。身なりや顔かたちなどのようす。
「風(ふう)」は、人や物の姿かたち。「学生の風(ふう)を装う」
「風(ふう)」は、人や物の姿かたち。「学生の風(ふう)を装う」
賢しい・・・1.賢(かしこ)い。利口だ。
2.抜け目がなくて、生意気だ。知恵のあるように見せかけるさま。小賢しい(こざかしい)。
3.気が強い。気丈である。心がしっかりしている。
4.優れて見える。じょうずである。巧みである。気がきいている。
5.健康である。丈夫である。
2.抜け目がなくて、生意気だ。知恵のあるように見せかけるさま。小賢しい(こざかしい)。
3.気が強い。気丈である。心がしっかりしている。
4.優れて見える。じょうずである。巧みである。気がきいている。
5.健康である。丈夫である。
ここに意味を表示
食パンの表現・描写・類語(パン・お餅のカテゴリ)の一覧 ランダム5
パンの中で、一番真面目なパンはどれか。 それはまちがいなく食パンである。 身辺を飾ることなく、虚飾を排し、自らは語らず、無欲恬澹、媚びず、へつらわず、ただこげ茶色に日焼けして静かに端座している。 その風貌は、まさにパン界の実直代表といえる。 他のもろもろのパンたちの、小賢しい小細工、おもねり、目立とう精神を一蹴して、威風堂々、自信に満ちあふれている。 奇をてらわぬ実質本位のその形からも、真面目ひとすじ、朴訥、愚直ともいえる生き方が感じられる。 〝食パン〟という名前もいい。 面白くもなんともないところがいい。 食パンの〝食〟は、主食の食である。 「箱形の型を使って焼いた主食用のパン」と広辞苑に出ている。 主食を担っている、という自信が、小賢しい細工を放棄させているのかもしれない。
東海林 さだお「タコの丸かじり (文春文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
「パン・お餅」カテゴリからランダム5
ゾリゾリと聞こえるのはカリカリに焼いたパンの表面をバターナイフの先が直にこすった時の音。バターの塊が熱で急に他愛もなく溶けていき、パンの小さな凹みという凹みに染み込んでいく。濃厚なバターの味、パンに染み込んで一体となったパンとバターの味、そしてその下の、少し湿り気をおびたパンの味、最終的に口の中はバターの脂にまみれる。
東海林さだお / 鯛ヤキの丸かじり amazon
(クロックムッシュ)すごくおいしそうに出来ていたが、これを一枚たべたら、ほかのものがあまり食べられなくなってしまいそうで、とうとう一度も食べなかった。
石井 好子「東京の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)」に収録 amazon
そのパンを食べたらぽそぽそしていて、いつまで噛んでも味があまりしてこない。お茶でやっと飲み込んだ。
よしもとばなな / まぼろしハワイ「まぼろしハワイ」に収録 amazon
同じカテゴリの表現一覧
パン・お餅 の味・おいしさの表現の一覧
食べ物表現 大カテゴリ