卵焼きはオムレツと違って、冷めても美味しくいただける

甘辛くてこってりとした関東風、甘みがなくダシを利かせた関西風、卵焼きは地方色があり、家庭の味ありと好みが分かれる

白身と黄身のまざったやさしい色。ふわふわっとした外見、とろとろっとした舌ざわり。

玉子焼の味の旨さはさる事ながら、少年の眸に、いつも奇異に感じたのはその白と黄の配色に彩られた焼け加減が、いつ、どんな時でも同じで、少しも変らない事であった。巻き焼の巻きをそろそろほぐして食べて行くと、まん中のしめり工合といい、まだ焼けない柔かさでのこっている塩梅が忘れられない。

軽く淡泊で、柔らかな甘さの厚焼き卵

「朝食」と銘うっているだけに玉子料理が多かった。

フォークの先から、半熟の卵が黄色い血液のようにぽたぽたと落ちる。

オムレツの美味しさはバターの利いた洋風のおいしさ。卵焼きの美味しさは、ダシと、素材の味を引き立たせる調味料の甘味と塩味に包まれた、和風の美味しさ。

（温泉卵）温泉特有のほのかな香りに包まれたゼリー状の白身とクリーム状の黄身は、滋養効果満点のまろやかな味

卵焼きの美味しさは、素材の味を生かしたシンプルな味付けにある。しかし、日本全国でその味の好みは異なる。