冬になると色彩が失せ、何もかもが灰色の風景の中に閉じ込められる

雪こそ降っていなかったが、曇り空で風が冷たく、自然と速くなる革靴の 跫音 が、アスファルトの歩道に、乾いた硬い音を響かせていた。

十二月になった。世間では師走の慌ただしさとクリスマスムードの華やかさが入り混じって賑わしい

（暖かい日が続いた冬）春めいた天気が続いていたが、どこかで手つかずの寒気の在庫でも見つかったかのように、今朝からまた急に寒さがぶり返していた。

冬の食卓には、体の芯からあたたまるようなあつあつ料理が欠かせない

透き通るような淡い水色の二月の空

弱いけれども幻想的な赤みを帯びた冬の夕日

春の近さを思わせるほのかな陽のぬくみ

二月の日差しとも思われない明るい横日

風の強い冬の夜には、明かりのついた窓は特別な優しい温もりを獲得する。天吾は光の灯った窓をひとつひとつ順番に目で追っていった。小さな漁船から夜の海に浮かんだ豪華な客船を見上げるように。