心が大波のように荒れる

気が揉めてならない

収拾がつかないほど感情が混乱する

波にほえる犬のようにやきもきする

半ばやけくそな気持ち

駐車場で後ろから車が来ているのに、駐車券が見つからないくらい焦る

心が大波のように荒れる

収拾がつかないほど感情が混乱する

口も利けないほど苛立つ

内臓を内側から噛まれるようないらだち

正気は蒸気のように飛びはじめている。

七尾は、自分の視界が狭くなるのが分かった。焦りのため、鼓動が早鐘を打ちはじめる。息が上がり、えもいわれぬ不安で胸が締め付けられる。頭を振った。どうする、どうする、と頭の中に囁き声が充満する。思考が、氾濫した水で押し流される。渦を巻き、思い浮かべた言葉や感情を、洗濯でもするかのようにごちゃまぜにする。七尾はその、焦燥感の洪水に身を任せた。激流が頭を搔き回す。もちろんほんのわずかな時間に過ぎず、たとえば、まばたきを数回するほどの間だったが、その奔流が止んだ途端、気持ちが切り替わった。頭の中の濁りが消え、思考や逡巡もなく、体が動く。先ほどとは打って変わり、視界が広くなる。

とり残されたように苛立つ

夢の中で空足を踏むような焦り

胸が炙られるような焦燥感

相手の剣幕に少なからず動揺し、言葉が上滑りするのを感じながら、佃はいった。

もどかしく感じる

どこが痒いのかわからないような苛立たしさ

背中を走る神経の束を逆撫でされたような苛立ち

動揺を鎮めるために、付け焼き刃のやり方で、自己暗示の言葉を反復してみたり、トイレの鏡の前で笑顔を作ってみたりした。