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その目が合った一瞬のあまりの短さゆえなのか、あるいはふたりの呼吸かなにかがぴったりと同調したのか、奇妙な、しかし確信に満ちた兄との一体感というか合一感に襲われた。今、ふたりは同じことを考えている。考えていることが同じなのではなくて、ふたりが一緒に、ふたりがかりでひとつのことを考えている。誰にそんなことを聞いたことがあるわけではなかったけれども、血のつながった兄妹というのはきっとどこもこういう瞬間があるものなのだ、とこの時知花は思った。
滝口 悠生 / 死んでいない者 ページ位置:31% 作品を確認(amazon)
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目が合う・見詰め合う・視線がぶつかる
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......之と知花のふたりだけがいたある時のことだった。床に座って雑誌の付録かなにかを広げていた知花がふとソファに寝そべっていた美之を見ると、美之も知花のことを見ていた。その目が合った一瞬のあまりの短さゆえなのか、あるいはふたりの呼吸かなにかがぴったりと同調したのか、奇妙な、しかし確信に満ちた兄との一体感というか合一感に襲われた。今、ふたりは同じことを考えている。考えていることが同じなのではなくて、ふたりが一緒に、ふたりがかりでひとつのことを考えている。誰にそんなことを聞いたことがあるわけではなかったけれども、血のつながった兄妹というのはきっとどこもこういう瞬間があるものなのだ、とこの時知花は思った。美之は、目が合った一瞬のそのあとにはすぐに目を逸らし、天井の方に目を向けた。合一の感はすぐに消え去り、また別々の人間として部屋のなかで過ごしはじめた。 兄妹の合......
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