(ツクツクボウシ)華車 な骨に石鹸玉のような薄い羽根を張った、身体の小さい昆虫 に、よくあんな高い音が出せるものだと、驚きながら見ていた。その高い音と関係があると言えば、ただその腹から尻尾 へかけての伸縮であった。柔毛 の密生している、節を持った、その部分は、まるでエンジンのある部分のような正確さで動いていた。――その時の恰好が思い出せた。腹から尻尾へかけてのブリッとした膨 らみ。隅 ずみまで力ではち切ったような伸び縮み。――そしてふと蝉一匹の生物が無上にもったいないものだという気持に打たれた。
梶井基次郎 / 城のある町にて ページ位置:13% 作品を確認(青空文庫)
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蝉(せみ)
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前後の文章を含んだ引用
......ー」に移りかけている。三重四重、五重にも六重にも重なって鳴いている。 峻 はこの間、やはりこの城跡のなかにある社 の桜の木で法師蝉 が鳴くのを、一尺ほどの間近で見た。華車 な骨に石鹸玉のような薄い羽根を張った、身体の小さい昆虫 に、よくあんな高い音が出せるものだと、驚きながら見ていた。その高い音と関係があると言えば、ただその腹から尻尾 へかけての伸縮であった。柔毛 の密生している、節を持った、その部分は、まるでエンジンのある部分のような正確さで動いていた。――その時の恰好が思い出せた。腹から尻尾へかけてのブリッとした膨 らみ。隅 ずみまで力ではち切ったような伸び縮み。――そしてふと蝉一匹の生物が無上にもったいないものだという気持に打たれた。 時どき、先ほどの老人のようにやって来ては涼をいれ、景色を眺めてはまた立ってゆく人があった。 峻がここへ来る時によく見る、亭 の中で昼寝をしたり海を眺めたりする人......
単語の意味
身体(しんたい)
腹(はら)
身体・・・人のからだ。肉体。
腹・・・1.ヒトなど動物の、胴の下半部の前面と考えられる側。背(せ)の反対側の部分。また、その内側にある内蔵。
2.(腹の内面にあるものとして)心。考え。感情。気持ち。また、度量や度胸、気力もいう。
3.物の中央の膨らんだ部分。「指の腹」「銚子の腹」など。
4.背に対して、物の内側の部分。
2.(腹の内面にあるものとして)心。考え。感情。気持ち。また、度量や度胸、気力もいう。
3.物の中央の膨らんだ部分。「指の腹」「銚子の腹」など。
4.背に対して、物の内側の部分。
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蝉(せみ)の表現・描写・類語(昆虫・虫のカテゴリ)の一覧 ランダム5
蟬 は今日もすがすがしい声で鳴き、空は 碧 く澄みわたり、まだ空気は 爽やかだった。
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
蟬の鳴き声が立体にびっちりと貼りついて
川上 未映子「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 amazon
(蝉の)羽全体が植物の芽生えに髣髴(ほうふつ)していた。
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
耳の底で潮騒のように鳴り響いている蝉の声
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon
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「昆虫・虫」カテゴリからランダム5
蜘蛛は巣をかけ始めた。偶然の風に乗って、糸をかけ、その糸を足場に魔法のように機(はた)を織る。
大庭 みな子 / 啼く鳥の amazon
ちりちりともつれたように短い啼音(なきね)を立てて、蝉が飛び移った
三島由紀夫 / 金閣寺 amazon
黒胡麻のような水すまし
外村 繁 / 澪標「澪標・落日の光景 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
蟬 が病室のむこうで息ぐるしい程、鳴いていました。
遠藤 周作「海と毒薬 (角川文庫)」に収録 amazon
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