舌の上へさらりと粉が散ったところへ、茶の味が流れてすうつと行くと、後は光風霽月、さらりとして少しのこだはりもなくなるのである。菓子の味にはこの趣きが大切である。すべてべつとりといつまでも舌へ甘味が残るのは、菓子の下の下に属すべきもので、舌へ載つてにはかに甘味が出ず、無あぢの如く淡々たる中に、自然にうす味が湧いて出るのが三昧境である。
子母沢 寛 / お茶に落雁 黒川光景「味覚極楽 (中公文庫BIBLIO)」に収録 作品を確認(amazon)
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落雁(らくがん)
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単語の意味
三昧境(さんまいきょう)
趣(おもむき)
甘味(あまみ・かんみ)
淡淡・淡々(たんたん)
淡(たん)
霽月(せいげつ)
三昧境・・・心を一つの対象に集中し、散乱せずに達した境地。心を一つの処に定め動じないこと。無我の境地。
趣・・・しっとりと落ち着いて、心惹かれる特徴や雰囲気。そのものがもっている、自然とかもし出される(いい)雰囲気。ずいぶん昔のものなのに、手入れがされているさま。風情(ふぜい)。
甘味・・・味覚のひとつで、あまい味。あまい食べ物。あまさの程度。
淡淡・淡々・・・1.落ち着いて感情の起伏があまりなく見える。言動に無駄がなく、あっさりしている。「淡々と仕事をこなす」
2.色や味などが淡白。しつこくなく、あっさりしている。
同じ漢字を重ねることで、語調を整えて意味を強めた表現。
2.色や味などが淡白。しつこくなく、あっさりしている。
同じ漢字を重ねることで、語調を整えて意味を強めた表現。
淡・・・淡いこと。味や色が濃くないこと。あっさり。
霽月・・・雨が上がったあとの月。転じて、曇りがなくって、さっぱりとした心境。
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落雁(らくがん)の味、おいしさを伝える表現・描写(和菓子のカテゴリ)の一覧 ランダム5
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オハギは反世界の食品である。中にあるはずのアンコが外側の皮になり、本来は皮になるべきご飯がアンコのように中に収まる。大変なデザインをしたものである。オハギは秋。パラダイムの大転換があったのかもしれない。それまでアンコを内に含んで、草餅や大福のように、つつがなく膨張してきたこの宇宙が、夏の終り、ついに臨界点に達する。宇宙は収縮に転ずる。時間が逆行をはじめる。アンコが外側に出てくる。ご飯が内側に内側に包み込まれる。
赤瀬川 原平 / 明解 ぱくぱく辞典 amazon
京都や金沢、松江など、古い町では当然、茶の稽古がさかんであり、したがって、菓子もおいしい。
池波 正太郎「食卓の情景 (新潮文庫)」に収録 amazon
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