列を作った三匹の雄魚は順々に海戦の衝角突撃 のようにして、一匹の雌魚を、柳のひげ根の束 の中へ追い込もうとしている。雌は避けられるだけは避けて、免 れようとする。なぜであろうか。処女の恥辱のためであろうか。生物は本来、性の独立をいとおしむためか。それともかえって雄を誘うコケットリーか。ついに免れ切れなくなって、雌魚は柳のひげ根に美しい小粒 の真珠のような産卵を撒き散らして逃げて行く。雄魚等は勝利の腹を閃めかして一つ一つの産卵に電撃を与える。
※備考※ 金魚の受精
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金魚
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前後の文章を含んだ引用
......の中に手を差出してみたり、頬を突き出してみたりした復一は、やがて 「風もない。よし――」といった。 日覆いの葭簾を三分ほどめくって、覗く隙間 を慥 えて待っていると、列を作った三匹の雄魚は順々に海戦の衝角突撃 のようにして、一匹の雌魚を、柳のひげ根の束 の中へ追い込もうとしている。雌は避けられるだけは避けて、免 れようとする。なぜであろうか。処女の恥辱のためであろうか。生物は本来、性の独立をいとおしむためか。それともかえって雄を誘うコケットリーか。ついに免れ切れなくなって、雌魚は柳のひげ根に美しい小粒 の真珠のような産卵を撒き散らして逃げて行く。雄魚等は勝利の腹を閃めかして一つ一つの産卵に電撃を与える。 気がついてみると、復一は両肘を蹲 んだ膝頭 につけて、確 く握 り合せた両手の指の節を更に口にあててきつく噛みつつ、衷心 から祈っているのであった。いかにささやかなもの......
単語の意味
愛おしむ(いとおしむ)
恥辱(ちじょく)
腹(はら)
愛おしむ・・・かわいがること。愛情を持って大事にすること。
恥辱・・・名誉やプライドを傷つけること。恥。
腹・・・1.ヒトなど動物の、胴の下半部の前面と考えられる側。背(せ)の反対側の部分。また、その内側にある内蔵。
2.(腹の内面にあるものとして)心。考え。感情。気持ち。また、度量や度胸、気力もいう。
3.物の中央の膨らんだ部分。「指の腹」「銚子の腹」など。
4.背に対して、物の内側の部分。
2.(腹の内面にあるものとして)心。考え。感情。気持ち。また、度量や度胸、気力もいう。
3.物の中央の膨らんだ部分。「指の腹」「銚子の腹」など。
4.背に対して、物の内側の部分。
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岡本かの子 / 金魚撩乱
綿菓子のようにふくらんで、風にのってながされている金魚もあった。
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水色の蟹 が敷居の上をゴソゴソ這 って行く。
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