坂の上を走ってるらしい車の音が風に送られて聞こえてくる

むっと熱い車内、フロントグラスからは真っ白にかーっと光った一本道だけが見えた。ビルも並木もまぶしかった。

フロントガラスに鼻をくっつけるようにして前方を注意する

雨はもうすっかりあがっていたが、車はまるで水の中をくぐり抜けてきたみたいに全身から水滴をしたたらせていた。

機銃掃射のような爆発音を轟かすスーパーカー

汽笛が空気を割くような音を立てる

山のような大波が船の背後から覆い被さる

（貨物船の）脇腹には病人のかさぶたのように貝殻がびっしりとこびりついている。

七尾は以前、一度だけ参加したことのあるカジノのルーレットのことを思い浮かべていた。どこに球が落ちるのか、それをもったいつけるかのようなゆっくりとした動きでルーレットは止まるが、新幹線もそれと似た雰囲気を見せた。駅で待つどの乗客の前で車両が止まるのかを選ぶように、どこにしようかなあのねのね、と焦らすかのような様子で、速度を落とし、そして、乗客の前に止まった。

一見するとアパート風の建物のようで船とも見えなかった。