それを思い出して、それはどちらかというと小気味のよいふるまいであるはずなのに、女のまわりに浮かんでいる何かと何かが小さく衝突した加減によって、くじかれて、なぜかとんでもない不安のなかに放り出されたような気持ちにもなって、立ちつくしてしまうというようなことがある。ときどき。しかしそれはいつも、ほんの少しのことなのでそれがしゅっと渦を巻いて消えてしまうまで、だいじょうぶ、だいじょうぶ。目をつむったりひらいたりして息を整えたりして色々なものを逃がしてやる。
川上 未映子 / あなたたちの恋愛は瀕死「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 ページ位置:1% 作品を確認(amazon)
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不安になる
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......行くことができてしまうこと。 女は新宿の真んなかのもっと真んなか、製氷機の出口のように人がざくざくとあふれてくる化粧品売り場を滑るようにいい気分で歩いてるときにそれを思い出して、それはどちらかというと小気味のよいふるまいであるはずなのに、女のまわりに浮かんでいる何かと何かが小さく衝突した加減によって、くじかれて、なぜかとんでもない不安のなかに放り出されたような気持ちにもなって、立ちつくしてしまうというようなことがある。ときどき。しかしそれはいつも、ほんの少しのことなのでそれがしゅっと渦を巻いて消えてしまうまで、だいじょうぶ、だいじょうぶ。目をつむったりひらいたりして息を整えたりして色々なものを逃がしてやる。 いい匂い。いい見栄っぱり。いい瓶、いい体。それからいいハンドバッグに、何もかものいい形。いい発色。いい目玉。いい毛髪にいい野心。 化粧品売り場で検分したり、鏡......
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不安になるの表現・描写・類語(恐怖・不安のカテゴリ)の一覧 ランダム5
何度打ち消してみても頭を 擡げてくる、その暗い不安。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
今度は、弟を失うことになるのだろうか。不意に、からだ中が不安でいっぱいになった。厚ぼったい暗幕が頭のてっぺんからかぶさってきたような不安だ。目の奥が少しくらくらした。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
その確信に近い堅固な思いの中に、細い 罅(ひび) のようになって不安が走り抜けていくのを自分でもどうすることもできなくなった。
小池真理子「愛するということ (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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「不安」の言葉を含む恐怖の表現・描写・類語(恐怖・不安のカテゴリ)の一覧 ランダム5
不安は深まった。霧の中の船が、不断に汽笛を鳴らすように、町子も手を束ねてはいられなかった。
岩田 豊雄 / 沙羅乙女「獅子文六作品集〈第4巻〉沙羅乙女・信子 (1958年)」に収録 amazon
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括ったはずの腹が、ふっ、ふっ、と断続的に揺らぐ
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
葉子の全身は電気を感じたようにびりっとおののいた。
有島武郎 / 或る女
吉川英治 / 治郎吉格子
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