梅雨が明けるのを待ちかねていたように、暑さはどんどん増していった。 蟬の声が、神去村を囲む山々から降ってくる。空気が澄んでいるぶん、日射しが直接肌に刺さって、ひりひりする。ぬるい風に乗って、草いきれのにおいが家のなかまで入ってくる。稲は穂をのばし、トウモロコシが茎にたがいちがいに実り、スイカはそこらの畑にごろごろしている。夏まっさかりだ。
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 ページ位置:48% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
田舎(いなか)
夏
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......ゃないんだがなあ。 山の彼方にもくもく湧いた入道雲を見て、ため息をつく。ため息をついたとたん、眉間に水が命中する。山太がきゃっきゃと笑いながら走り去っていく。 梅雨が明けるのを待ちかねていたように、暑さはどんどん増していった。 蟬の声が、神去村を囲む山々から降ってくる。空気が澄んでいるぶん、日射しが直接肌に刺さって、ひりひりする。ぬるい風に乗って、草いきれのにおいが家のなかまで入ってくる。稲は穂をのばし、トウモロコシが茎にたがいちがいに実り、スイカはそこらの畑にごろごろしている。夏まっさかりだ。 でも、林業に夏休みはない。 うだる熱気のなか、俺は班のメンバーと山で仕事しつづけていた。汗でずぶ濡れで、作業着を着ている意味があまりない。頭が蒸れて、ヘルメッ......
単語の意味
草熱れ(くさいきれ)
草いきれ(くさいきれ)
蝉・蟬(せみ)
草熱れ・・・夏の強い日差しによって、草の茂みがむっとした熱気を出すこと。また、その熱気。
草いきれ・・・夏の強い日差しを受けて、草の茂みから立ち上る、ムッとする熱気。
蝉・蟬・・・1.セミ科の昆虫を総称。夏に鳴く虫の代表。羽を畳んで木に止まり、雄は高い声で鳴きたてる。幼虫は数年かかって成虫になるが、成虫の寿命は10日から20日と短い。
2.高いところに物を引き上げるときに使う、小さな滑車。
2.高いところに物を引き上げるときに使う、小さな滑車。
ここに意味を表示
田舎(いなか)の表現・描写・類語(地上・陸地のカテゴリ)の一覧 ランダム5
時どき烟 を吐く煙突があって、田野はその辺 りから展 けていた。レンブラントの素描めいた風景が散らばっている。
梶井基次郎 / 城のある町にて
このカテゴリを全部見る
夏の表現・描写・類語(夏のカテゴリ)の一覧 ランダム5
このカテゴリを全部見る
「夏」カテゴリからランダム5
花火の玉がぷくぷくと震えながら光の線を飛ばしていた。 頼りない光が、下からあたし達の顔を照らしていた。
朝井 リョウ / ひーちゃんは線香花火「もういちど生まれる (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
青葉の色も目にしみる初夏のころ
石井 好子「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)」に収録 amazon
初夏の日がひっそりと光を降らして、土には物の影が濃い
久米正雄 / 学生時代 amazon
一雨ごとに、芒 はのびて、もう武蔵野は、夏めいてくる。
吉川英治 / 野槌の百
午前中、うるさいほどに鳴いていた蟬は静まり、中庭を満たすのはただ、降り注ぐ夏の日差しだけだった。
小川洋子「博士の愛した数式 (新潮文庫)」に収録 amazon
「地上・陸地」カテゴリからランダム5
梶井基次郎 / 冬の蠅
車窓を通り過ぎていく見慣れた街のたたずまいが、映画のなかの風景のように細部まで生きいきと際立って見える。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
泥はますます深く、 膝 を越した。片足を高く抜き、重心のかかった他方の足が、もぐりそうになるのをこらえ、抜いた足で、泥の上面を掃くように、大きく外に弧を描いて前へ出す。その足がずぶずぶと入る勢に乗って、後に残した足を抜き、同じように前へ出す。
大岡 昇平「野火(新潮文庫)」に収録 amazon
昼寝しているような静かな住宅街
三上 延 / ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち amazon
同じカテゴリの表現一覧
夏 の表現の一覧
地上・陸地 の表現の一覧
風景表現 大カテゴリ