帯の間から懐中鏡を取り出して顔を直そうとすると、鏡がいつのまにかま二つに破 れていた。《…略…》あすの船出の不吉を告げる何かの業 かもしれない。木村との行く末の破滅を知らせる悪い辻占 かもしれない。
有島武郎 / 或る女(前編) ページ位置:24% 作品を確認(青空文庫)
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胸騒ぎ・嫌な予感
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......。 四十格好の克明 らしい内儀 さんがわが事のように金盥 に水を移して持って来てくれた。葉子はそれで白粉気 のない顔を思う存分に冷やした。そして少し人心地 がついたので、帯の間から懐中鏡を取り出して顔を直そうとすると、鏡がいつのまにかま二つに破 れていた。先刻けつまずいた拍子に破れたのかしらんと思ってみたが、それくらいで破れるはずはない。怒りに任せて胸がかっとなった時、破れたのだろうか。なんだかそうらしくも思えた。それともあすの船出の不吉を告げる何かの業 かもしれない。木村との行く末の破滅を知らせる悪い辻占 かもしれない。またそう思うと葉子は襟元 に凍った針でも刺されるように、ぞくぞくとわけのわからない身ぶるいをした。いったい自分はどうなって行くのだろう。葉子はこれまでの見窮められ......
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黒い影が幾つも頭上を横切っていく。それが警告だったみたいに、無風の静けさを破って断崖の下から強い突風が吹き上げてくる。木々の枝が揺れる。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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