どこまで行っても空には雲ひとつなく、地上には終始飛行機の影が映っていた。正確に言えば我々は飛行機に乗っているのだから、その山野を移ろう飛行機の影の中には我々の影も含まれているはずだった。だとすれば、我々もまた地上に焼きつけられているのだ。

鹿児島湾の上空を、古ぼけた練習機が飛んでいた。《…略…》極度にのろい速力で、ちょうど空を這っているように見えた。

（巨大な炎を吐く飛行機は、）ゆっくりと滑走路を滑り始めた。地面が揺れている。銀色の巨大な金属は徐々にスピードを増す。ピッチの高い音で空気が燃えているように感じる。《…略…》胴体の脇に付いたさらに巨大な四機の筒が青い炎を吐いた。《…略…》飛行機は白い腹が浮いたかと思うと、あっという間に雲の中に吸い込まれた。

編隊がまた西の空から芥子粒（けしつぶ）ほどの姿をみせた。

飛行機の機体が激しく揺れる

過ぎ去るバイクの乾いた轟音

こんがらかったチューブの中で、エンジン・ルームの緑いろに塗ったエンジンは、いつも重症の熱病患者のように、身を慄わせて唸っている。

ただ小さな蒸気船が石油くさい波を立てながら右往左往しているきり

車が速度を緩める。合流してくる別の車を割り込ませてあげている。

乗用車が一台、起き上がれない甲虫のように腹を見せたまま放置される