腫れ物に触れるようにそわそわする

悪魔に乗り移られてでもいるように狂おしい

微かな苛立ちに似た思いが腹の底で渦巻く

心が浮き立つ

きょときょと

下っ腹から上へ上へと泥水が湧き上がってるような焦燥感

いたずらに歯を噛み鳴らすような苛酷な苛立ち

七尾は、自分の視界が狭くなるのが分かった。焦りのため、鼓動が早鐘を打ちはじめる。息が上がり、えもいわれぬ不安で胸が締め付けられる。頭を振った。どうする、どうする、と頭の中に囁き声が充満する。思考が、氾濫した水で押し流される。渦を巻き、思い浮かべた言葉や感情を、洗濯でもするかのようにごちゃまぜにする。七尾はその、焦燥感の洪水に身を任せた。激流が頭を搔き回す。もちろんほんのわずかな時間に過ぎず、たとえば、まばたきを数回するほどの間だったが、その奔流が止んだ途端、気持ちが切り替わった。頭の中の濁りが消え、思考や逡巡もなく、体が動く。先ほどとは打って変わり、視界が広くなる。

心の中をかきむしられるような激しい焦燥

とり残されたように苛立つ

瘦 せて、どことなく暗くなっていた私は、妹と住んでだんだん元気を回復していった。あの頃妹は、まるで心地よい 羽根布団 や、熱のある日のアイスノン、寒い日のシチューみたいに思えた。私は知らず知らずのうちに、まいっていたのだろう。

気が立つ

彼の分別のあった心は、闘牛者の槍を受けた牡牛のように荒んでしまった。

私は文章を書いて暮らしている。実はその日も急ぎの仕事で、ある写真家の撮った風景写真に文章をつけるというのがあったのだが、頭が痛くてとてもその荒波の海の写真世界に入っていけなかった。

泣きたくても涙が出てこないようなもどかしさ