かたちのあるもので、お金を積んで買えないものはまず何ひとつありません。

手が切れるような新しい紙幣

札束が硬い煉瓦のように積み上げてある。

眼の飛び出るような大金

うすあおい静脈のある千円札

やがてこの国にも不況が来た。冬を感ずるのは一番先に小鳥であるように、巴里の不景気を感じたのはまず町の唄うたいだった。

食べるものがないので野犬まで食べた

選みたい人がないのに、どうしても選め、選まなくては国民の義務を果さない事になると云われるのは、本屋へはいって、買いたいと思う本は一冊もないのに、どうしても何か買って出なくてはならないというのとおなじで、切ないですね。

（お金は）リレー競争のバトンみたいに目まぐるしく渡り歩く

借金ばかりが釣鐘をかぶせたように彼等を掩（おお）うている。