伊豆の別荘で潮風にまみれて、いとおしんだサユリの手や足たち。それらの饒舌で美しい蜘蛛のようなゆったりとした動き。

芋虫か何かのように、ベッドの上で動いている二人

激しいセックスをした翌朝のいつもの感触が、下半身にかすかに残っていた。身体の奥までひっかきまわされたような甘いだるさ。

感動的な愛の儀式

野呂とキスをしたり、抱き合ったり、性交したりすることが、わたしの中でどんな意味をもっているのか、その時、はっきりわかった気がした。 　わたしの中の、野呂を求める気持ちが性的な欲望を呼び覚まし、それを生理のレベルで充足させんがために、肉体は勝手に反応し続けるのだが、実はわたしが本当に欲しいと思っていたのはきっと、それではないのだ。野呂と一つになること……肉体も精神も共に一つになることを求めながら、どうやっても一つになりきることができないもどかしさに喘いで、その喘ぎを野呂と共有し、分かち合うこと……それこそ、わたしが野呂に欲しているものなのかもしれなかった。

彼女はまだ彼との愛の圏内にいて

私はこの恋愛にそれなりに浮かれていた。

つがいの小鳥たちのように神経質に短くキスをしたりする。

美しく装い、甘い言葉を投げかけ合う。

不安な恋情を複雑に搔き立てた。