さざなみの三角にとがったもようが、たえまなくちらちらと揺れていた。

灰色の漣（さざなみ）をよせる湖の水面が、磨くのを忘れた鏡のやうに、さむざむと開けてゐる。

波は静かに寄せている

白波がかすかな潮の香と音とをたてて、その足もとに行っては消え、行っては消えする

波が引いていくと、水の音とともにざらざらざらと石の転がるような音もする。

30 分ばかりそこに横になって、少しだけうとうとと眠ったが、そのあいだビーチをおとずれる人間はひとりもいなかった。そのうちにぼくは不思議なくらいしんとした気持ちになってきた。その浜辺はひとりぼっちで訪れるにはあまりにも静かであり、あまりにも美しすぎた。そこにはある種の死に方を想い起こさせるものがあった。

河口の鵜（う）の喉（のど）の膨らみのようになっている岸

なみはざぶん、ざぶんと堤防のはるか下のほうにぶつかってはクリームのような細かい泡を水面に広げていた。

川瀬のしゃらしゃらした音

的皪（てきれき）として、午後の日を受けた近江（あふみ）の湖が光つてゐる。