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そこだけは星が光っていないので、雲のある所がようやく知れるぐらい思いきって暗い夜だった。
有島武郎 / 或る女(前編) ページ位置:52% 作品を確認(青空文庫)
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夜
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前後の文章を含んだ引用
......出ると、甲板のあなたはさっきのままの波また波の堆積 だった。大煙筒から吐き出される煤煙 はまっ黒い天の川のように無月 の空を立ち割って水に近く斜めに流れていた。 そこだけは星が光っていないので、雲のある所がようやく知れるぐらい思いきって暗い夜だった。おっかぶさって来るかと見上くれば、目のまわるほど遠のいて見え、遠いと思って見れば、今にも頭を包みそうに近く逼 ってる鋼色 の沈黙した大空が、際限もない羽をたれたよう......
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