雷（らい）の如き鼾声（かんせい）を放って熟睡

深い鼾睡（かんすい）に陥る

獣のようなイビキをかく

夢のなかにいるひとの息づかい。

小さなふいごのような寝息

横たわっているためにひろがった乳房

（熟睡から起こされて）頭の中は大雨の中の水田みたいにひどく漠然として、見極めがつかなかった。シーツにはまだ午後のセックスの記憶がかすかに残っていたし、カーディガンのボタンを掛け違えたみたいに、すべての物事が一段階ずつ現実との接点を失っていた。

身動きすると苦しく、目をつぶると靄（もや）のような眠気がかぶさってくる。

思い出そうとするそばから霧散していく夢の、仄かな感触だけが残っている。

時計の針はもう十時をまわっている。昼に近い朝の光が、針で刺すように目の奥を痛めた。