古代の神々のように、雲がいくつも海の上に泛（うか）んでいる

空には刷毛でひいたような白い雲が幾筋か流れ

はるか高い丘の辺りは雲にかくれた黒い日に焦げ

空にはいくつか小さな雲が浮かんでいたが、それらはまるで中世の銅版画の背景に描きこまれた雲のように鮮明で簡潔なかたちをとっていた。目につく何もかもが見事にくっきりとしているせいで、僕自身の肉体がいかにも茫洋としてとりとめのない存在であるように感じられた。

漆（うるし）を流したような雲

末遠いパノラマのなかで、花火は星水母（くらげ）ほどのさやけさに光っては消えた。

長い並木道が、まるで延ばした帯皮のように、何処までも真直ぐに長く続いて、月夜の晩にはキラキラ光る。

通りかかった雲の、観音様の仰むけになったようなのが

空が群青から淡い紫、白みがかった青に変化する

空も、はかないようなうっすら白い雲がはるかにベールのようにかかった静かな青色をたたえていた。透明な液体がそっとこぼれてしまいそうな不思議な青だった。