清澄で豊潤な肉のうまみ

松阪の牛が丹精こめて飼育された処女なら、この伊賀牛はこってりと脂がのった年増女である

２センチ角ぐらいにコロッと切った、山かけのまぐろさながらの牛肉

焼く。煮る。炒める。揚げる。蒸す。それぞれの調理法によって、期待するおいしさは異なる。

明治天皇の獣肉解禁（明治五年）以来、大正、昭和の時代を経て、平成に至るまで、いろいろな獣肉を用いた西洋料理が、日本料理の中に取り入れられてきた。

僕が牧舎に入ると、二百頭の羊たちは一斉に僕の方を向いた。《…略…》何頭かは柵から頭をつきだして水を飲んでいたが、彼らは水を飲むのをやめて、そのままの姿勢で僕を見上げていた。彼らはまるで集団で思考しているように見えた。彼らの思考は僕が入口に立ち止まっていることで一時中断していた。何もかもが停止し、誰もが判断を保留していた。僕が動き始めると、彼らの思考作業も再開された。《…略…》好奇心の強い何頭かだけが柵から離れずにじっと僕の動きを見つめていた。

脂の乗りも、臭さも、満点

薄い塩味の利いたねずみのソテー。柔らかくてしかも張りがあり、淡白でありながらとても奥深い味をしている。

ネズミの肉はあっさりとしていて、食用ガエルや鶏肉に似ているが、カエルのように水っぽくなく、鶏のように野性味があり、もっとコクがあって精妙である

煮込めば煮込むほど味わいを増す野趣満天のくま鍋